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蛸のテ・フェケ(Te Wheke)の物語語り部:マイケル・エルキントン(Michael Elkington)物語を聞くと、その物語を理解するために、あるいは、物語の中の出来事を別の観点から解釈するために、同じような物語が他にもないか探し求めたくなる。これはそのような物語のひとつです。 昔々、遥か彼方のハワイキ(Hawaikii)という島に、ムトゥランギ(Muturangi)というトフンガ(Tohunga: 呪術師)がいました。ムトゥランギは住んでいた村を追われて、人里から遠く離れた寂しい場所におりました。ムトゥランギは、自分をこんな所へ追放した村人たちに復讐してやろうと、考えを巡らしていました。 ある日、ムトゥランギは海の浅瀬で餌を食べている蛸を見かけました。そこで呪術を使ってこの蛸に魔法をかけ、自分の家来にしてしまいした。 ムトゥランギは蛸のテ・フェケを海へ使いに出し、魚を捕まえては自分のところに運ぶように言いつけて、その魚を食べていました。ある日、ムトゥランギはふと思い付いてテ・フェケに言いました。「村人たちが網を張っているところ行って、網の中の魚を取ってきなさい。その方がおまえも自分自身の力で魚を捕まえるよりは楽だろうからな。」 こうしてムトゥランギはたくさんの食べ物を手に入れて、村人たちへの復讐もできたのですが、まだ、腹の虫が収まらず、さらなる復讐を考えていました。 一方、村の漁師たちは全く魚が獲れずに村に帰ってきました。そして、もっとひどいことに、全ての網が破れていました。なかには修理ができず、もう使いものにならないものもありました。 「誰が魚を盗んだんだ!」とひとりの漁師が叫びました。「俺の網は使いものにならなくなった。」と別の漁師が言いました。漁師たちは途方に暮れてしまい、このいまわしいできごとがいったい何を意味しているのかを尋ねるため、周りの人たちからとても尊敬されているマオリの勇士クペ(Kupe)を捜しに行きました。 相談を受けたクペは「俺が漁に出て、誰が俺たちの網を台無しにし、魚を盗んでいるのかつきとめてやろう!」と言いました。クペが自分のワカ(カヌー)でその漁場にやってくると、ほどなくテ・ラ(太陽)が新しい一日の旅を始めようとゆっくり昇り始めました。 クペは自分の網を仕掛けてじっと待っていました。ほんのしばらくするとクペは海の静寂を乱すものがあることに気づき、だんだんと、それが魔法にかけられているためだということがわかってきました。 「ムトゥランギだ!あいつが蛸のテ・フェケを使って村人たちの網を台無しにし、魚を盗んで食べているんだ!」とクペは気づきました。 クペはタイアハ(Taiaha)という長いこん棒を使ってテ・フェケを打ちつけ、両者の間に戦いが始まりました。クペは非常に力が強くて、風よりも早く動くほど身のこなしも軽く、いくさ上手で有名でした。対する蛸のテ・フェケには、これまた素早く動く足が8本ありました。 テ・フェケの足とクペのタイアハがあちらこちらで振り回されて、時にはその動きを目で追うことができないぐらいの速さで戦いが繰り広げられました。一方が攻撃するともう一方が防御し、攻撃からからくも逃れては反撃に出る、そんな格闘が延々と続きました。 くんずほぐれつの大乱闘はテ・モアナ・ヌイ・ア・キワ(Te Moana Nui a Kiwa: 太平洋)の大海原から陸に乗り上げました。クペがテ・フェケをテ・タウ・イフ(Te Tau Ihu: 南島の北部)の岸に何とか引っぱり上げると、今度は地上での戦いになりました。クペは力をさらに振り絞り、テ・フェケを押さえ込もうと必死になりました。 この怪力を持つ両者が大暴れしている間に、陸地には大きな溝ができ、海水がその溝にどっと入り込んできました。そして、その地形の変化はテ・フェケが弱って、くたくたに疲れるまで続きました。 テ・フェケは自分の死が近づいていることに気付くと、なおさら絶望的になって死から逃れようとのたうちまわりました。そのせいで巨大な石がいくつも転がって、一つの長い線上に並びました。 ようやく、クペは勝利の手ごたえを感じ取りました。 クペは宙を飛んで自分自身のすべての体重をかけ、テ・フェケにとどめの一撃を加えました。テ・フェケは真っ二つになって息絶えました。その時飛び出したテ・フェケの両目は、テ・タウ・イフ地方の別々の場所に落ちて岩になりました。その一つはトリ海峡にあるアラパワ島の隣にある岩です。初めてルアカワ・モアナ(Raukawa Moana: クック海峡)を旅するときに、その「蛸の目」である岩をじっと見ることは悪運をもたらすと言われています。もう一つの目はストークの背後にある小さな渓谷、ナ・ファトゥ(Nga Whatu)に落ちました。その渓谷の正式な名前はナ・ファトゥ・オ・テ・フェケ・オ・ムトゥランギ(Nga Whatu o Te Wheke o Muturangi: ムトゥランギの蛸の目)と言います。 この物語に出てくる二つの岩に関しては、調査の結果、いずれも地質学的にその周辺環境とそぐわないものであること、そして現在の位置にこのような異質な岩があるのは不自然であることがわかっています。 テ・フェケの足で削り取られてできた陸地の溝は今日、マールボロ・サウンドと呼ばれています。また、転がって一列に並んだ巨石はネルソン・ボールダー・バンクス(ネルソン巨石堤)です。テ・フェケの物語は、このような地形がどうやってできたのかを説明したものです。ナファトゥ渓谷(ネルソンのストークの背後にある渓谷)の名前は、真っ二つになったテ・フェケの体が谷の両側の丘になったという逸話にちなんでつけられました。 |
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