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フード&ワイン

 

ニュージーランド料理界の王者と期待の新星

国際的に名高いシェフ、ピーター・ゴードンに続く期待の新星がニュージーランドの料理界に登場しました。彼の名はベン・ミルズ、25歳です。

ミルズ氏は最近、ゴードン氏が手がけた有名レストラン「ダイン(Dine by Peter Gordon)」の料理長に抜擢されました。同レストランはオークランドのスカイシティ・グランド・ホテル内にありますが、ミルズ氏にとってスカイシティは馴染みのある職場だということです。彼の前職はスカイタワー上にある回転レストラン「オービット(Orbit)」の副料理長で、他にも過去数年にわたり、何度か転職しながらスカイシティ内で経験を積んできました。初めて厨房全体を一任されるようになったミルズ氏は、次のように語っています。

「このような素晴らしい機会に恵まれたことをとても嬉しく思っています。これまでは料理長になることを目標にしてきたので、それが叶った今、新たな挑戦を存分に楽しんでいます。5ヶ月ほど海外で過ごして戻ってきたばかりなのですが、帰ってきてよかったと感じています。それは、ニュージーランドの環境は料理人から見ても優れているからです。ここには重荷になるような伝統がなく、シェフは常に新しい発想で新しいメニューを開拓しています。世界各国で様々な料理の本を読んできましたが、その大半が伝統に手を加えることに消極的です。ニュージーランドは多文化社会なのでヒントも多く、ちょっとした思い付きから自由に試行錯誤ができます。また、国内の気候も各地で異なるので、素材の種類も豊富です。そういったことからも、新しい挑戦に適した環境だと言えるでしょう」

新たな挑戦
料理長ともなると、予期せぬチャンスに巡り合うこともあります。本記事のためにミルズ氏にインタビューをした際、ちょうどコンサートのためにスティングとザ・ポリスがニュージーランドに来ていたのですが、ミルズ氏は同ミュージシャンに同行するシェフのために、オークランドで特注の日本食材を調達するという役割も担っていました。

また、「ダイン」の責任者として、ミルズ氏とゴードン氏はメニューや仕入先、材料の変更などについて、綿密に打ち合わせをしています。これについてミルズ氏は、「私たちは常に新しいメニューを開発しています。そのためのアイデアや材料探しにも余念がありません。ピーターは発想の源であり、よき協力者でもあります。彼はとても鋭い感覚の持ち主で、身の回りのどんな小さなきっかけも見逃しません。彼のスタイルが好きなので、ピーターの豊富な知識と食に対する情熱を受け継ぎながら、自分なりのスタイルを築いていくという、願ってもない機会を得ました」と述べています。

ピーター・ゴードン氏は自らが運営に係わる「プロヴィドアーズ(The Providores)」と「タパ・ルーム(Tapa Room)」のあるロンドンを主な拠点としていますが、年に4~5回はニュージーランドに帰国し、「ダイン」を監督しています。「ダイン」はニュージーランドの食材とフュージョンの手法を最大限に活かした先駆的な存在として高く評価されています。ゴードン氏はフュージョン料理の草分けとしてはもちろん、チャリティや料理本の出版、国際的なメディアでも活躍するシェフとして有名です。

よりよいものをより美味しく
ゴードン氏は1986年、「シュガー・クラブ」(ウエリントン)のオープンを機に、料理界の国際舞台に踊り出ました。同氏はその後のニュージーランド料理界の急速な変化を振り返り、今ではこの国の食文化に誇りを感じていると語っています。「1978年にある友人がギリシャで5リットル缶のオリーブオイルを買って帰ってきたんです。その当時は、それが何のためのものか、誰も知りませんでした。今日では、表彰されるようなオリーブオイルがニュージーランドで作られています。また、私は1981年にオーストラリアに移ったのですが、その頃ニュージーランドにカプチーノなど存在しませんでした。この国では短期間に状況が変わったのです」ゴードン氏によると、今やニュージーランドでは世代を問わず、誰もがカフェやコーヒーを身近に感じ、楽しんでいるということです。

彼はまた、平均的なニュージーランド人の味覚も洗練されてきて、質の良い食べ物に対する理解も深まってきたと考えています。「ファーマーズ・マーケットが発達し、食を楽しもうとする姿勢もひろく一般に見られるのは、嬉しい限りです。海外旅行の経験者も増えて、例えば、プロヴァンスで美味しいものに出会って、これならニュージーランドでもできそうだ、やってみよう、と考える。そんな風にして、今までは親しみのなかった食べ物も次第に認知されるようになってきたのではないでしょうか」一方、ニュージーランドを訪れる旅行者も、意外に食べ物が美味しいと喜んでいます。「この国の食事情は事前に想像しにくいせいか、実際に口にしてから風味豊かで食材も良いことに驚く方が多いのです。国産のオリーブが手に入ることも、カンタベリーでサフランが栽培されていることも、ほとんど知られていません」

ゴードン氏は、ファーマーズ・マーケットで屋外レストランや屋台での飲食も楽しめるようになればフード・ツーリズムも発展するのでは、と期待を寄せています。同氏はまた、フード・マイレージという尺度で温室効果ガスの排出量を示そうとする風潮に対して、警鐘をならしています。ニュージーランドからイギリスへ輸送されている食品のうち、空輸はわずか1.5%を占めるに過ぎません。しかも、フード・マイレージは輸送だけに着目し、生産過程を無視しています。ゴードン氏は、二酸化炭素を考慮するのであれば、生産過程も含めて考えるべきであり、ニュージーランドは地理的な要因だけで格好の批判対象にされてしまった、と主張しています。リンカーン大学の研究によると、イギリスで販売されているラム肉を比較したところ、ニュージーランド産のほうが国産品よりもエネルギー効率が4倍も良好であるということです。同様に、乳製品では2倍、リンゴでは40%、タマネギでは30%と、いずれもニュージーランド産の輸入品のほうがイギリス国内のものよりもエネルギー効率上優れているという結果が出ています。

可能性は無限大
「プロヴィドアーズ」を運営しながら、世界各国のレストランのコンサルタント役も果たすゴードン氏は、自らを「新しい発見と創作料理をこよなく愛する起業家」と表現しています。「ありとあらゆる料理が現代のシェフたちと出会い、食の世界に無限とも言える新しい可能性が生まれていく。私はそこに魅力を感じるのです」

「私は新しい味覚と食感を追求して、フュージョン料理を作り上げました。しかしながら、2006年にオークランドにタパス・バーを出そうという話が持ち上がったときは、フュージョンとは全く関係のない、現代のスペインをそのまま反映したものにしようと決めました。いろいろとコンセプトをまとめて、名前もスペイン語でベジョータ(Bellota)にしました」

オタゴ地方北部にあるゴードン氏のブドウ園、ワイタキ・ブレーズ(Waitaki Braids)も好調です。同氏が手がけるドレッシングとチャツネを扱う会社は、近日中に新製品を出す予定です。さらに、イギリスでも今年早々にグルメ・パイの新シリーズを発表するなど、ゴードン氏の活躍は続きます。


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