アメリカズカップ挑戦艇を支える、工夫上手のキーウィたち
ニュージーランドの人々は発明や工夫が上手で、フェンス用のワイヤーだけで何でもやってしまうとも言われています。
その才能と長年の経験から磨かれた造船技術は、アメリカズカップのヨットを支える大きな力になっています。
アメリカズカップで使用されるヨットの設計については様々な規定があり、その枠の中でアイデアをひねっては、他のチームが試みたことのないユニークな打開策が模索されているのです。
オークランドの港湾地区を本拠地とするエミレーツ・チーム・ニュージーランド(以下、ETNZ)は、2007年に最新型ヨット2艇(NZL84とNZL92)を建造しました。その開発にあたって専門家を集めるのに、遠くまで足を延ばす必要はありませんでした。
隣接するヴァイアダクト・ベイスンには、世界でも最先端のヨット関連技術を持つ会社が多数集まっています。ETNZのリギングを担当したサザン・スパーズやノース・セイルズといった会社は国際的にも有名です。また、ノースショアを拠点とするクックソン・ボーツは、競技用ヨットのメーカーとして世界でも最高水準です。同社は過去にチーム・ニュージーランドのヨット6艇を製造しています。
ETNZの設計コーディネーター、アンディ・クロートン氏は、「世界でも最先端のヨット関連会社がすぐ向かい側にあるという環境は、新しいヨットの建造に非常に有利です」と語っています。
「経験のあるスタッフが豊富で、誰もがニュージーランドならではの高品質の製品に仕上げることに熱意を持っています。ここにでは関係者が互いに尊重しあい、より良い結果が生み出されているのです」
超一流の競技用ヨットとなると、キールだけで50万米ドル相当と多額の資金が必要になります。ETNZは2003年の大会で使用したものをできる限り再利用し、改良を加える方針です。
「白紙の状態から設計し直す予算はありません」とクロートン氏は述べています。
昨年、NZL84がヴァレンシアに姿を現したときは、批評家は思わず驚嘆しました。前回のアメリカズカップをリードした船は、風下へ向かう際のスピードを強化するべく、側面に平板を用いた幅の狭い構造に改造されていたのです。
クロートン氏によると、IACCの新規定のもと、設計は困難を極めたということです。「規定ははるかに厳しくなり、設計上の違いを出すことはほとんど不可能に近い状態」と彼は語っています。
「改造したと言っても、これまでにないような驚くほどの新しい何かを導入したわけではありません。ちょっとしたアイデアを活かそうとすると、ルールに阻まれてしまうのです。ですから、既存のものをいかに詳細に検討しなおし、磨きかけていくかが勝負になっています」
ヴァレンシアの海はオークランドより空気の力が軽いため、船体を狭くし、水に接する面積を極力減らす設計が主流になります。クロートン氏は、今回のレースの鍵は帆の設計にあると考えています。
「防衛戦のときと大きく違うのは、実戦でのデータを蓄積することができる点です。おかげで短期間に集中して作業を進めることができました。しかし、同時に常時実戦に備えていなければならないため、ストレスも重なったと思います」
ETNZの設計部には、ニュージーランドの熱心なサポーターから、ヨットの速度を上げるアイデアが続々と寄せられています。それにはアメリカズカップを再び母国にという願いが反映されています。
「一般の人々からも大量のメールが送られてきます。将来役に立つアイデアが見つかるかもしれないので、一通りは目を通すことにしています」とクロートン氏は語っています。
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