古代のマオリの人々は、道具や武器、装飾品類を作るのに珍重されたポウナム(グリーンストーン、翡翠)の採れる西海岸へ往復するために、山越えの安全な道を切り開きました。その後入植を始めたヨーロッパ人たちは、肥沃な土壌を持つ谷間に農場を開拓したり、鉱物資源を求めて鉱山を開きました。今日、マウント・アスパイアリング国立公園として保護されているこの広大な地域は、世界遺産テ・ワヒポウナム(Te Wahipounamu)-南西ニュージーランド(South West New Zealand)の一部を成しています。 マウント・アスパイアリング国立公園はハイキングやトレッキングを楽しむには最高の場所です。特に公園へと通じる道路にある入り口付近には比較的短時間で楽しめる様々な遊歩道が集中しています。また、ルートバーン・トラック(Routeburn track)やダート/リース・リバー・サーキット(Dart/Rees River circuit)、グリーンストーン/ケイプルズ・トラック(Greenstone/Caples track)、ウィルキン・バレー・トラック(Wilkin Valley track)など、バラエティ豊かな渓谷を歩く数多くのトレッキングコースがあり、見晴らしの良い峠を越えて、谷から谷へと歩くことができます。 数多くの山々がそびえるマウント・アスパイアリング国立公園内の最高峰マウント・アスパイアリングは、マウント・クック国立公園以外で唯一3000メートルを越える山です。公園内南西部に広がるレッド・ヒルズ(Red Hills)は、その土壌に高密度のマグネシウムを含んでいるため、植物がほとんど生育しない公園内でも最も風変わりな場所です。 公園内の森林限界より標高の低いエリアの多くはブナ林に覆われています。日当たりがよく霜の降りない場所には赤ブナが多く、比較的標高の高い地区には寒さや冬の降雪にも強い銀ブナや山ブナが生育しています。しばし発生する地滑りや雪崩で斜面の森林の一部が失われると、ニュージーランドでは数少ない落葉樹のひとつで日当たりを好むリボンウッドと呼ばるアオイ科の木が育ちます。森林限界より標高の高い地域には、スノー・タソックと呼ばれる低草木や、キンポウゲの一種マウンテン・バターカップやヒナギクが咲く草原が広がります。 木々の生い茂る谷間には固有の鳥類が数多く生息し、美しいさえずりでトレッキングコースを歩くハイカーの耳を楽しませてくれます。高山地帯には絶滅の危機に瀕している希少種イワミソサザイや、人懐っこいケアが生息しています。山岳地帯に住むオウム、ケアはこの地を訪れるハイカーのお弁当を勝手に食べたり、靴やリュックサック、テントなど人の持ち物に驚くほどの興味を示して悪戯をします。