優雅な青色、氷河を歩く - フォックス氷河 - エコ・ツアー特集

雄大な景観や手つかずの山野などさまざまな自然の姿にあふれたニュージーランド。氷河体験というのも、なかなか得がたい驚きがある。氷河は南島の南西部にあり、ふもとの村から歩いて行けるという気軽さにまず驚く。氷河に着いて自分の足で踏みしめられたことや、氷河は意外にも優雅な青色だったことを知って、また驚いた。何万年もかかってできた自然の造詣こそ、エコ。その象徴ではないか、と思えてならなかった。

ウエストコースト
Fox Glacier, ウエストコースト

Will Prescott

ウエストコースト
フォックス氷河, ウエストコースト

Fox Glacier Guiding

ウエストコースト
Climbing - Fox Glacier, ウエストコースト

katrina.elizabeth

ウエストコースト
Fox Glacier, ウエストコースト

Rob & Jules

クライストチャーチからバスで西海岸のゲートウエィの町グレイマウスに行き、そこでレンタカーを調達した。西側に広がるタスマン海に沿って延びる国道6号 を南に下ると、氷河のふもとの村に着く。フランツ・ジョセフ氷河とフォックス氷河の二つがあって、それぞれの登り口となる村が国道6号沿いに隣り合ってい る。車で10分ほどの距離なので、両方の村を行き来してみた。どちらに泊まってもガイドしてくれるツアー会社がそろっていて大きな違いがないことが分か り、やや規模の小さいフォクス氷河の村に宿をとった。

その日は、朝から雲行きが怪しく、午後は土砂降りだったが、翌日は朝から晴れ上がった。一日のうちに四季があると言われるニュージーランドでは、旅の空は あまり気にしないのが一番だ。午前9時前、村の中心部にあるフォクス・グレイシャー・ガイディング社のオフィスを訪ねると、私と同様の予約客が三々五々集 まり始めていた。午前中の半日コースに挑戦する人たちだ。午前9時半、出発前の説明が始まった。軽いナップザックや防寒・防水を兼ねたズボンなど必要に応 じて借りられる。氷河を歩くための靴とすべり止めの金具は必需品だが、あとで二つの意味があることを知る。

30人だった予約客は15人ずつに分かれ、私のグループにはタラさんという女性ガイドがついた。バスで10分ほど移動すると、そこが氷河の入り口。峡谷に 伸びている白い氷河の先端が見える。「毎日、少しずつ動いています」というタラさんの説明もあって、まずは、ここで感動するのだが、それは、そのあとの哀 歓の序章にすぎなかった。

峡谷の斜面に沿う道を登っていく。普通の山の登山道といった風情だ。そう思ったのは最初だけ。上り坂がいっそう急な坂になったり、はしごを伝ってよじ登っ たり。なるほど、氷河にたどりつくのは、簡単ではない。下りの道もあって安心するが、道というより、ほぼ垂直の階段もある。手すり代わりの鎖をつかみなが らゆっくりと、すべり落ちないようにして降りて行く。

冒険、探検の気分になって、けっこう楽しく、貴重な体験ではある。と思いつつ、だんだん堪(こた)えてきたのが、借りて履き替えてきた靴の重さ。氷河の上を 歩くとき滑らないよう重くなっているというもう一つの意味を、すぐに知るのだが、途中の山道では、「ああ、自前の靴のまま来て、氷河の上で履き替えればよ かった」と思う。朝の説明では、そういうアドバイスは一言もなかった。心の中でつぶやきながらも、氷河に着いた。木々の間から見え隠れしていた氷河が、こ こからは氷の真上になる。朝、借りた歯のような金具を靴の底に装着する。がっちりと氷に食い込み、靴の重さとあいまって滑り止め効果を発揮してくれる。重 い靴でよかった、と今度は逆の気持ちになった。

タラさんがピッケルで足元の氷を削りながら「道」を整えてくれる。そのあとをみんな一列になってゆっくりついていくと、急に視界が開けた。氷河の比較的平ら な広がりに着き、ここがツアーの目的地だった。ここまで休み休み歩きながら、ざっと1時間。自分の足で来られて、直に氷河を踏みしめることができるなん て、地球上でもそうざらにない。途中はきつかったが、それを吹き飛ばすほどの喜びを感じる。

みんな記念撮影をしたり、もってきたジュースを飲んだり。1時間近く滞在できる。私が一番感動したのは、氷河の不思議な青さだ。透明か、あるいは白だと 思っていた。その両方なのだが、うっすらと優雅に青い。そばにいた男性ガイドに尋ねたら、「光の屈折によるのです。どういう仕組みでそうなるのか、実は私 もうまく説明できないのです」。正直な答えに、ニュージーランドらしいおおらかさを感じてしまった。撮影のため三脚を立ててはいけない。ごみは持ち帰る。 当然のルールがある。

終わってふもとに戻って、証明証をもらった。「氷河を歩いたことを証し……」のあとに書いてあった言葉に笑ってしまった。「当地の荒 天と、ガイドの退屈な口上に耐え忍んだことを証す」。ニュージーランド人の茶目っ気まで体験させてくれる氷河歩きだった。

ライター:青柳光郎(あおやぎ・みつろう)

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