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森の再生、鳥の声にも癒されて【ティリティリ・マタンギ島】

 

ボランティアたちの植林が森を再生し、鳥の楽園になっている島がある。北島のオークランド市の港から船で1時間ほどのティリティリ・マタンギ島だ。ニュージーランドの歴史の一面を象徴し、普通の人たちが生態系の復活にどう取り組んだか分かる島ともいえる。ある晴れた日に訪ねてみた。


 
 

 
 
  環境保全省によるルールの説明 - click for more.
環境保全省によるルールの説明
船が近づくにつれて、島の緑がはっきりしてきた。濃い色、淡い色、様々な緑に覆われている。実際に木々が見えてくると、緑の豊かな広がりは想像以上だった。なぜ、ここまで再生できたのか。謎解きをしたくなる気持ちがつのった。桟橋から上陸すると、まず環境保全省(DOC)の駐在員が島の説明をしてくれた。鳥の生態を変えないため、エサをやらない。携帯電話の電源を切る。自分が出したごみは持ち帰る……といった具合だ。
 
 
特集
KIWI WALK デボンポートコース
KIWI WALK デボンポートコース ニュージーランドを楽しむKIWI WALK。オークランド対岸のデボンポートは、空と海と都市のバランスが、いつ見ても美しく感動的です。


ティリティリ・マタンギ島 - click for more.
ティリティリ・マタンギ島は、ニュージーランドで最も成功した環境保護プロジェクトの島として知られています。フェリーに乗って、野鳥に会いに行ってみましょう。


アクティビティ特集
バードウォッチング
バードウォッチング 人々がニュージーランドを発見するまで、島はキーウィ・ケア・トゥイ・コカコ・ベルバード・サドルバック・ロビン・イエロー・アイド・ペンギン(キガシラ・ペンギン)といった鳥類によって支配されていました。それらの多くが世界中でここでしか見られない種類です。


Yahoo! Japan アース・プロジェクト
Yahoo! Japan アース・プロジェクト
Yahoo! Japan アース・プロジェクト
世界中の大自然やエコ活動をする著名な人々に今後の地球を語って頂くYahoo! Japan特別企画。ビジュアルギャラリーを通して、ニュージーランドの自然の美しさと儚さを伝える内容です。


植林で地球環境を考えるというドナさん(左)とスチュアートさん - click for more.
植林で地球環境を考えるというドナさん(左)とスチュアートさん


 
 
ボランティアの案内 - click for more.
ボランティアの案内
島は公開保護区といって、誰でも行けるが、ルールがあるのだ。上陸できる人数も一日で150人までと決まっている。自分たちを縛るものはなくて、むしろ楽しくしてくれるルールではないか。説明を聞いたあと、島内ツアーが始まる。いくつかのグループに分かれ、どのグループにもボランティアのガイドがつく。DOCが管理している島だが、実際に運営しているのはボランティアたちだ。私のグループをガイドしてくれたのはシャロンさんという女性だった。ふだんはオークランド空港で働いているそうだ。
 
 
 
  ティリティリ・マタンギ島 - click for more.
ティリティリ・マタンギ島
歩く小道を緑の木立が覆い、島全体に広がっている。どれも再生した緑だ。ニュージーランドは、1000年ほど前に南太平洋から移住してきたマオリが先住民だが、19世紀後半になるとヨーロッパ人の本格的移住が始まった。牧草地を作るため原生林が切り倒されたり、焼かれたりした。DOCによると、国土の約7割を覆っていた原生林は23%にまで減ってしまった。面積220ヘクタールのこの島でも1850年代から牧畜が始まり、1980年に保護区に指定された時、島の94%に樹木の姿はなかった。ニュージーランドの歴史の全体に通じる島なのだ。
 
 
  ほかと大きく違うのは、植林して元に戻そうという運動が始まったことだった。オークランド大学の研究者や近隣の愛鳥家らが呼びかけ、普通の市民たちがボランティアで参加した。苗木は島の中で手に入れた。谷地や低地など牧畜に関係ないわずかな場所に残っていた樹木から種を集めて発芽させ、苗木にした。「島の外からもってきた種や苗木は根付きがよくなかったからだ」と、初期の事情を知っている人が教えてくれた。植林は1984年に始まり、94年まで足かけ11年で30万本近くが植えられた。初めは朝から夕方まで一日中植えた。すると、参加者が徐々に減っていった。
 
 
  「午前中だけの植林にして、午後は島内を散策したり、浜辺で泳いだり、自由に遊ぶようしたの。そうしたら、また増えてくれました」と、最初からかかわっているバーバラさんが言う。結局、参加したボランティアは数千人にもなったという。いくつかの事情が順に分かるにつれて、再生の謎解きも進んだ気がする。そう納得して、緑の森を歩いていく。ポフツカワという大きな木の前でシャロンさんが「これも島で種をとって植えた木です。ニュージーランドのクリスマスツリーといわれ、12月に赤い花をたくさん咲かせ、鳥が蜜を吸いに来ます」と教えてくれた。
 
 
 
蜜を吸うベルバード - click for more.
蜜を吸うベルバード
植林したもう一つの目的は野鳥の聖域作りだった。移民たちが森林を伐採したことによって野鳥の多くが営巣地を失った。移民が連れて来た犬や猫、ネズミの食害にもあい、固有種の鳥が減ったり絶滅したりした。これもニュージーランドのあちこちで起きたことだ。植林した面積が広がるにつれて、そうした鳥を少しずつ別の場所から連れてきて放し、その数は合計11種になる。島へ自由に飛んでくる鳥を含めて今では約80種類が見られるそうだ。木の枝の間に姿が見えたトゥイ。マオリの言葉で緑を意味するカカリキ。花の蜜を吸うベルバードやスティッチバード。どれも色鮮やかで、声も美しい。小柄なロビンや、飛べない鳥タカヘは人に寄ってくる。
 
 
 
  鳥に蜜を与えるハニーフィーダーの箱 - click for more.
鳥に蜜を与えるハニーフィーダーの箱
蜜を吸う鳥。虫を捕まえる鳥。それぞれよく見ると、くちばしの形が微妙に違う。それまではどの鳥を見ても一般的な鳥にしか見えなかったものが、いろいろ教わると、一羽一羽の個性が見えてきて、愛らしく感じてしまう。これも「エコ」の意味なのだと思った。

いったん曇った空が再び晴れ、高台から見える海の広がりも明るい青に変わった。鳥ばかりか景色までが気持ちを和ませてくれる。歩き始めて、ざっと2時間で終点だ。小高い丘で、灯台もある。売店には土産物や記念品が並ぶ。何を買っても島の活動を維持する寄付になると聞いて、鳥の写真入り解説書を買った。

 
 
 

ライターの独り言

旅先で思わぬものに出合い、しかも、それが自分の興味をもっていることだと嬉しくなることがある。オークランドの西部を案内するツアー「コースト・ツー・コースト」を営むドナさんとスチュアートさん夫妻の自宅を訪ねたときがそうだった。ツアー客に「自分の木を植えて下さい」と牧場の一角を提供しているのだ。「ささやかな温室効果ガス対策」だそうで、夫妻は緑の地球を目指す国際的な認証制度「グリーングローブ」にも参加している。木には番号が付き、植えた人には「自分の木」となる。