ニュージーランドのマオリ文化と日本文化の類似点
マオリ文化と日本文化における最も顕著な類似点は、その言葉にあります。マオリ語は日本語と同じ母音を持つばかりでなく、日本語によく似た音の単語もたくさんあります。例えば、マオリ語の「アワ(awa)」は、日本語の「川(Kawa)」を意味します。「お腹」の表す単語の「プク(puku)」は、日本語でお腹が一杯になることを意味する「満腹(Manpuku)」の「腹(puku)」に類似しています。さらに、「食べ物」の指す「カイ(kai)」は、日本語でも食べ物の「貝(kai)」です。
マオリ人も日本人も伝統的に魚や貝を食べる習慣を持ち、海の恵みである海産物はどちらの食文化においても欠かすことができません。近年では生活も便利になり、従来ほど魚介類を日々の食事で摂らなくなりましたが、それでも両文化にとって海産物は、儀式用として主要な食ベ物となっています。マオリ人ガイドのホネ・ミハカ氏は、マオリの人々がいかに海産物を大切に利用してきたのかなど、マオリの文化を旅行者に紹介しています。ホネはタイアマイ・ツアーの責任者でもあり、ノースランド地方の海辺の町、パイヒアを拠点にツアーを行っています。ツアーに参加して、マオリの伝統的なワカ(航海用のカヌー)の漕ぎ方を教わったり、天候などの条件が許せば、ニュージーランド特産のグリーン・リップト・マッスル(ムール貝の一種)を獲りに海へ潜ってみるのもよいでしょう。たとえ潜らなくても、ベテランのダイバーでもあるホネが喜んで魚介類を獲ってきてくれます。
マオリと日本のどちらの文化においても、伝統祭事は古くから生き生きと華やかに催されてきました。日本には、亡くなった人の霊を祀る「お盆」のように全国的な年中行事があるほか、その土地々々に伝わる風習や慣わしによって、地域特有のお祭りも多くあります。マオリ文化においては、隔年に行われるテ・マタティニが主要な行事となっています。これは、いわばカパ・ハカ(グループで行うマオリの伝統芸能)の祭典で、北島のパーマストン・ノースで開催されています。お祭りでは、国内の地区大会を勝ち抜いてきた選りすぐりのカパ・ハカ・グループが集結し、名誉ある全国チャンピオンを目指してその技が競われます。カパ・ハカのほかにもタ・モコ(マオリの入れ墨)やファカイロ(伝統的な彫刻作品)といった伝統芸術の展示もあり、テ・マタティニは現代演芸と伝統芸能の両方を体験できるマオリ文化の祭典といえます。
マタリキもまた重要なマオリのお祭りで、日本文化との関わりも見られます。マタリキとは、日本では「すばる」、西洋では「プレアデス星団」の名で知られる一群の星を指すマオリ語の名前です。この星団は、日本では地方によって「むつら星(六連星)」とも呼ばれていました。「すばる」の語源は古くは古事記や万葉集などの書物に、また「すばる」の星そのものについては枕草子といった文芸作品に登場します。マオリの伝統では、冬の6月にマタリキが夜明け前の東の夜空に現れると、それは収穫の終わりを告げると同時に、春の種まき期に備える「新年」の始まりを意味します。収穫の終わりは、人々がご馳走を食べたり、新年の到来を祝ったりする楽しい季節で、お祭りや出し物、コンサートなど様々なイベントが全国各地で催されます。南島のテカポ湖にあるマウント・ジョン天文台は、マタリキの星をより身近に観測するには絶好の場所です。天文台の代表でもあるテカポ在住の日本人ガイド、小澤英之氏が、マタリキとはマオリと日本の文化にとってどのような意味を持つのかを解説してくれます。
年長者を先達者として敬い、その知識と経験に敬意を表す慣習は両文化に共通しています。マオリ社会では、祖父母と親、子どもの三世代が同居することも珍しくなく、お年寄りを高齢者住宅や老人ホームなどの施設に入れることは望ましからぬことだとされています。一方、日本では、毎年9月第3月曜日は、社会につくしてきたお年寄りに敬意を払う「敬老の日」として国民の祝日になっています。
日本には和装の着物や日本古来のスポーツである相撲、書道など、古くから守り受け継がれてきた文化があり、その伝統を礎に、現代の日本文化があります。マオリ文化においてもファカイロ(伝統的な彫刻作品)やカパ・ハカ(グループで行うマオリの伝統芸能)、ラランガ(織物)といった古来の伝統技術が継承され、ニュージーランドにもこれらマオリの伝統が脈々と息づいています。これらマオリの伝統芸能はいずれも、北島のロトルアにある、マオリ文化と地熱活動で有名な「テ・プイア」で体験することができます。
マオリと日本の両社会にはキリスト教が普及していますが、日本の「神道」に見られるように、どちらの社会も、外来の諸宗教と融合することなく、現在も固有の信仰や習慣が受け継がれています。マオリと日本の土着信仰にはよく似ている点があります。それは、生命の有無を問わず、この世に存在する全てのものに神、あるいは聖なる力が宿ると考える点です。北島最北のファーノースを拠点とするツアー会社、フットプリント・ワイポウアでは、樹齢2000年という荘厳なカウリの巨樹「タネ・マフタ」を見に行くツアーを催行しています。「タネ・マフタ」は名実ともにマオリの森の神です。
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