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伝説の英雄が愛した場所

ニュージーランド・ヘラルド紙オンライン版より:

エドモンド・ヒラリー卿がニュージーランドでも特に好んだ場所は、彼の人柄を反映するかのような険しく飾り気のない道の先にあります。

ピハ・ロードから外れてワイタケレ山脈のさらに奥へと向かうアナファタ・ロード。石がごろごろと音を立てる未舗装の道路で、所によっては車のすれ違いが不可能なほど幅が狭くなっています。

10kmばかり進むと、車数台分の駐車スペースがあります。ここがローズ・トラックの出発点です。

ヒラリー卿の最初の妻、ルイーズ・ローズの旧姓をとって名付けられたこのトラックは、急な斜面を下り、ホワイツ・ビーチにつながっています。

生前に世界中を旅したヒラリー卿でしたが、1991年にヘラルド紙が行ったインタビューでは、地球上で最も特別な場所は、という問いに対して、このホワイツ・ビーチの名前をあげています。

ビーチに向かう道の途中、徒歩20分ほどの所に、ヒラリー卿が所有したコテージがあります。コテージの100m下のビーチでは、白波が岩を打っています。暑い日には過酷とも言えるほどの道のりなので、よっぽど体力のある人でなければ、ここまでは歩いてきません。斜面の上には、激流や高波、水面下の岩に注意を呼びかける看板が立っています。

ビーチにはライフセーバーもいません。

ヒラリー卿が亡くなって数日後、現地に行ってみると20人余りの人がいました。

ニュージーランド史上最高の英雄のお気に入りと知って来ている人はいませんでしたが、彼もここが大好きだったということについては、誰も驚きはしませんでした。

ある女性は「本当に素敵な場所」だと言っていました。「人目もなく、自分だけの時間が過ごせます。簡単に人を寄せ付けないような所にあるのも、とっておきの場所にしておくために自然がそうさせたのかも知れません。」

賑やかなピハの北に位置する黒砂のビーチは、端から端まで400m程度で、下りて行く途中から全体が見渡せます。両端を原生林に覆われた崖にふさがれているので、ビーチから見えるものといえば真正面にどこまでも続く海だけです。

海から上がってきたばかりの人は、「ここで泳ぐと、シャンペンの中で泳いでいるような感じがする」と言い、ヒラリー卿が気に入るのも当然ではないかという話をしていました。

ヒラリー卿は訪問先であらゆる5ッ星クラスのホテルに滞在しました。しかし、いくら快適であっても、屋外で寝泊りする喜びには変えられない、と彼は語っていました。

もちろん、ネパールも、太陽の光あふれるインド北東部のラジャスタン州も、ヒラリー卿にとって特別な場所には違いありません。

それでも、荒涼とした海岸の美しさに浸るひと時に並ぶものはなかったのでしょう。

「海外へ出かけても、この魅力があるから私は帰ってくるのです。帰り道はいつも幸せな気分です」

「住みたい場所は唯一、ここだけです。私は最期にこの地を見届けたいと願っています。」

記者:スチュアート・ダイ