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アドベンチャー

 

秋のフィヨルドランドを旅する

ヘリコプターが飛び立った瞬間、眼下に広がるミルフォード・サウンドの風景に心をとらわれ、私はフィヨルドランドの大きなサンドフライのことなど忘れてしまいました。つい先ほど水上からマイター・ピークとボーエン滝を見たときには自分が小さく取るに足らない存在のように感じられましたが、上空から見るとまた違った印象を受けます。

突如数メートル先に山の岩肌が迫り、そのままうっすらと雪に覆われた山頂へと急上昇、私たちは次に何が起きるかと息をのみました。頂上に到達するとそのまま下の谷間に向かって急降下します。パイロットのジェフ・シャンクスさんがミルフォード地域を20年近く飛んでいることを知っていたので安心でしたが、私は興奮して叫ばずにはいられませんでした。

ペンブローク氷河の上を飛びながら、その氷の鮮やかな青さに驚きました。冬には雪に覆われてしまう氷河ですが、5月に訪れた私たちは幸運にも青い氷河を見ることができたのです。また、ミルフォード・サウンドは夏のような人出がなく、レッドボート・クルーズに乗っている間、すれ違ったのは他にボート2隻と数人のカヤッカーだけで、その美しさを静かに堪能することができました。

ニュージーランド最南端の都市インバーカーギルに着いたのは2日前でしたが、もうずっと前のように感じられます。バーンズ・オイスターのファクトリーショップで新鮮なブラフ・オイスターを1ダース買った後、サザン・シーニック・ルート沿いの町テ・アナウへと旅を開始したのでした。

ドライバーを務めてくれたシーニック・シャトルズのクレイグ・バーンズさんが偶然新鮮なレモンを持っていたので、早速そのレモンを絞って牡蠣を食べました。自然な海の塩味がきいたなめらかな舌触りで、1つ、また1つと私は12個全部を平らげてしまいました。

サザン・シーニック・ルートを進んでいくと、南からのうねりで有名なサーフィンビーチ、コラック・ベイが左手に現れました。右手を見ると常に吹き付ける南風によって傾いた木々が並んでいます。枝と葉は全て一方向へ伸び、まるで腰が曲がり髪に寝癖がついた老婆のように見えました。

次に通過したのはトゥアタペレの町です。ソーセージが自慢のこの町は、トゥアタペレ・ハンプ・リッジ・トラックのスタート地点として有名です。このトラックは海岸沿いから原生林や亜高山地帯までフィヨルドランド国立公園内を3日で歩くルートです。

テ・アナウに到着した私たちは、テ・アナウ・ロッジに2泊しました。このロッジは1936年に近くの町ナイトキャップスに修道院として建てられ、2003年にテ・アナウ湖を見渡す2ヘクタールの現在の敷地に移築されました。建物は豪華なベッド&ブレックファストに改装されましたが、今も建築当時のさまざまな特徴がそのまま残されています。

部屋に荷物を置き、バスルームのスパバスを確認すると、私は図書室の暖かい暖炉へと吸い寄せられていきました。革製のカウチに身を沈め、キャロットケーキを味わいながら、テ・アナウ湖とフィヨルドランド国立公園の山々の風景を堪能しました。

翌朝、目を覚ますとパンとマフィンが焼けるいい香りがしました。昔のままのステンドグラスの窓があるチャペルで朝食をとるのです。豊富な朝食のメニューの中で、一番は何と言ってもホストのニコラ手作りのチョコバナナ・マフィンでしょう。これはダイエット中の人も手を出さずにはいられないおいしさでした。

朝食をすますと、私たちはダウトフル・サウンドの玄関口、マナポウリに向かいました。風もなくよく晴れたその日はマナポウリ湖の湖面にさざなみひとつありません。ダウトフル・サウンドへは3つの乗り物を乗り継いでいきます。まずボートでマナポウリ湖を渡り、バスでウィルモット峠を越え、ディープ・コーブでカタマランに乗り込みます。

3時間のクルーズではダウトフル・サウンドの数多くの入り江の中でも特に美しい場所を探索します。ダウトフル・サウンドはフィヨルドランド国立公園内にある14のフィヨルドのうち2番目の大きさを誇り、隣の有名なミルフォード・サウンドの3倍の長さと10倍の面積があります。また、野生動物の生息地としても有名で、クルーズの途中でイルカの群れとも出会いました。そんなときは船のエンジンを止め、静かに彼らの様子を観察するのです。

ダウトフル・サウンドの入り江では、海面が周囲の風景を鏡のように映し出し、山と海の境目がわからないくらいです。緑の原生林もくっきりと映り、そのまま水面を歩いていけるのではと錯覚するほどでした。

ディープ・コーブに戻る途中、2匹のフィヨルドランド・ペンギンを見かけました。キマユペンギンとも呼ばれ、眉毛のような黄色の飾り羽がクールなフィヨルドの住民です。

その晩はレッドクリフ・カフェで夕食をとりました。小ぢんまりとした居心地のよいこのカフェではポエム・ナイトというイベントが催されており、地元の人々で賑わっていました。映画『ロード・オブ・ザ・リング』撮影時にはキャストの行きつけのカフェとして人気があり、ライブ・エンターテイメントの会場としても知られています。

その日の締めくくりとして、私たちはフィヨルドランド・シネマの大きくふかふかなシートに座り、ショートフィルム『アタ・フェヌア – シャドーランド』を鑑賞しました。上映時間30分のこのフィルムは、地元のヘリコプター・パイロット、キム・ホローズさんが2年をかけて撮影したもので、観客をフィヨルドランドの威厳に満ちた秘境へといざないます。この小さな映画館はこのフィルムを上映するために2004年10月に建てられたものです。

フィルムに映し出されるフィヨルドランドは、ドラマチックで刺激的かつ謙虚です。四季を通じて撮影されていますが、より静かな春と秋のフィヨルドランドの素晴らしさをよく伝えています。


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