ヒラリー卿への賛辞、続々と
2008年1月14日
このほど88歳の生涯に幕を閉じたエドモンド・ヒラリー卿に、世界中から続々と哀悼と称賛の言葉が寄せられています。
テンジン・ノルゲイ氏の孫にあたるタシ・テンジン氏によると、シェルパ族の人々は恩人の死を悼み、ニュージーランド国民の悲しみに思いを寄せているということです。
同氏はヒマラヤ高地へ取材に訪れたフェアファックス・メディアに対して、次のように語っています。「ニュージーランドの人々もみな、深い悲しみの中にいることでしょう。けれども、これほど大きな心を持った偉大な人物が母国に存在したことの幸せも感じてほしいと思います。彼はニュージーランドだけでなく、シェルパや世界中の人々に勇気を与えてくれました」
「私たちシェルパの誰もが、父のような存在であった偉大な英雄を失ったと感じています」
また、テンジン氏は、ヒラリー卿の支援で建設された学校と病院が多数あることに触れ、人々は彼のことをいつまでも忘れないだろう、とも述べています。
「私にとってヒラリー卿は英雄そのものです。それは彼の人格から言えることであって、登山の経歴が英雄を生んだのではありません。登頂を成し遂げたことは確かに偉業ですし、誰がどの山を制覇しようと、偉業と言われるでしょう。しかし、山から下りた後に恩徳を仲間にささげ、さらに友情を深めるという行いは、ヒラリー卿という英雄だからこそできたのです。私たちは本当に偉大な人を亡くしました。」
南極での追悼式
昨日、氷に覆われた南極の海を見下ろす小さな木造の礼拝堂に100名近くが集まり、エドモンド・ヒラリー卿の追悼式が行われました。
雪の礼拝堂と呼ばれるチャペルにはステンドグラスの窓があり、美しい光が差し込んでいました。それは50年に及ぶヒラリー卿の南極支援を称える式典にふさわしい会場となりました。
スコット基地のコーディネーター、イボンヌ・ボスタリング氏は式典を振り返り、誰もが彼の意志の強さと謙虚さ、そして寛大さを偲んだ、と語っています。
ヒラリー卿1957年に南極のスコット基地を設立し、1958年の1月には改造した農業用トラクターで遠征隊を率い、1912年以来初めてとなる南極点到達を果たしました。
その後もヒラリー卿は何度も南極へ渡りましたが、スコット基地の開設50周年の記念式典に出席した昨年1月の訪問が最後となりました。その際は本人の希望により、質素な三角屋根の小屋で数日を過ごしました。
当時のジャーナリストに聞く
エドモンド・ヒラリー卿のエベレスト登頂という世紀の大ニュースを最初に記事にしたジャーナリストは、ヒラリー卿死去の知らせに涙をおさえることができませんでした。ジェームス・モリス氏(1972年に性転換のためジャンと改名)はニュージーランドのサンデー・スター・タイムズ紙に対し、訃報は夜半の電話で登山仲間のジョージ・バンド氏から聞いたことを明らかにしています。その後、モリス氏のもとには取材やインタビューの依頼がイギリスやアメリカから多数寄せられているということです。
モリス氏は、ヒラリー卿には特有の雰囲気が漂っていて、彼を中心としてひとつの文化が形成されていた、と涙ながらに語りました。中でも彼の慈善活動には特に心を動かされたということです。「ネパールで成功して有名になった彼は、自分にその機会を与えてくれた国に、借りを返したのではないでしょうか。彼はエベレストに上ったことよりも、ネパールの人々のために尽くしたことで語り継がれていくと思います」
「自分に名声をもたらした人々に対して、これほどのお返しをした人物はほかにありません。彼は名声にも栄誉にも影響されませんでした。一養蜂家であった彼と、世界一の有名人となったあとの彼に、全く違いはありませんでした」
また、モリス氏は1953年当時のヒラリー卿を次のように表現しています。「のっぽで快活で、動作は優雅とは言えなかったけれど、魔力に近いエネルギーに満ちた人でした。あふれ出てくるような活力は輝かしいほどで、周囲まであっという間に元気にしてしまう。例えるなら、アメリカ大陸を一気に横断する、頑丈なディーゼル特急といったところでしょうか」
モリス氏の5人の子どものうち、ヘンリーはヒラリー卿を名付け親としています。また、何十年もの間には、登山家の集まりでヒラリー卿と再会する機会もたくさんありました。バンド氏をはじめとする遠征隊のメンバーは、皆ヒラリー卿の死を深く悼んでいます。「言い古された言葉ですが、これでひとつの時代が幕を閉じたと感じています。少なくとも私にとっては、彼のいた時代は別世界になってしまいました」
ヒラリー卿の母国ニュージーランドでは、1月22日、オークランドのパーネル地区にあるセント・メアリーズ教会で国葬が行われることになっており、目下その詳細が検討されています。この葬儀はニュージーランド史上最大規模のものになると予想されています。
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