先人の足跡を辿るマウントクック登山
2010年11月17日
ニュージーランドの登山史に残るアドベンチャーを再現する試みが来週サザンアルプスのアオラキ・マウントクックで始まります。挑戦者は両者ともニュージーランド人ですが、今回は新旧の対比も見所となります。
というのも、挑戦者のうちひとりは最新式の装備を使用し、もうひとりは120年前の衣服と装備で出発することになっているからです。
歴史を辿る登山を企画したのは、南島横断レース「コースト・トゥ・コースト」の優勝者スティーブ・ガーニー氏。スティーブ・モファット氏と組んで、先人の歩みを追体験すべくニュージーランド最高峰に挑みます。
開拓時代そのままに
花卉栽培を生業とするクライストチャーチ在住のモファット氏は60才。孫もいる世代ですが、アドベンチャー・レースの常連です。今回の登山には、120年前の「最新」装備を身に付けて臨みます。
衣類はツイードのウール地のジャケットとパンツ、オイルスキンのジャケットとオーバーパンツです。就寝時にはウール地の毛布を縫い合わせ、オイルスキンで覆った寝袋に入ります。
これに対してガーニー氏は、衛星通信電話とGPS、最新技術を駆使したメリノウールの衣類、フリース、ダウンジャケット、通気性のよい化繊の防水パーカーとパンツを使用します。
ガーニー氏はゴム底のブーツにアイゼンを装着しますが、モファット氏は鋲を打った昔ながらの革底のブーツで歩きます。
山に挑む勇者たち
2人の挑戦には山岳ガイドや撮影隊、ニュージーランドの登山家であり歴史家でもあるヒュー・ローガン氏も同行します。
発案のもとになっているのは、カンタベリー地方のマーマデューク・ディクソン氏(農業)とジョージ・マナリング氏(銀行員)がアオラキ・マウントクック登頂を目指した1890年のアタックです。
両氏は頂上まで40mの地点に迫ったものの、初登頂達成は4年後、1894年のクリスマスの日にトム・ファイフ氏に譲ることになりました。
現代ではリンダ氷河のふもとに広がるグランド・プラトーまでスキープレーンで移動するのが通例となっていますが、初期の探検家は登山を始める前に厳しい旅を乗り越えなければなりませんでした。今回はその足跡も踏襲することになっています。
馬車とカヌーで
かつてマナリング氏とディクソン氏は、山のふもとのタスマン川を渡るために、重たい木製のカヌーを運ばなければなりませんでした。下山後はカヌーで鉄道橋のある所まで川を下り、クライストチャーチ行きの列車に乗って戻りました。
今回ガーニー氏とモファット氏はタスマン川まで馬車で行き、モファット氏は40kgの木製カヌー(レプリカ)で、ガーニー氏は19kgの空気注入式シーカヤックで川を渡ってベースキャンプへ向かいます。
登山を終えた後はダムや運河を通りながら川を下り、ワイタキ川下流の橋まで戻ります。
訓練
両者とも登山は専門ではないものの、登山技術を学んでいくつかの山で登頂経験を積んできました。
モファット氏にとって最大の課題は、アイゼンを使わず鋲付きのブーツで雪や氷の固まった斜面を歩くことだそうです。足場の確保も、1940年代の直線的なピッケルが頼りです。
当時の安全対策は腰回りに命綱をかける程度でしたが、今回は念のため現代仕様のハーネスを使います。
モファット氏とガーニー氏は、先人の挑戦を再現することを通じて、ニュージーランドでもあまり知られていない探検家の物語を追体験しようとしています。
「誰かが何かを成し遂げようとするとき、そこに素晴らしい物語が生まれます。私もその語り手になってみたいのです」とモファット氏は述べています。
初の歴史的アドベンチャー
両氏は2008年にも歴史にちなんだアドベンチャーを完遂しています。それは、木製の古いカヌーと徒歩で西海岸のホキティカから東海岸のリトルトンまで横断する、モファット氏の三代上の先祖の冒険を再現したものでした。
その際に使ったカヌーのうちひとつは今回のアドベンチャーにも使われます。また、ガーニー氏はケブラー製のシーカヤックで、モファット氏は重い木製のカヌーでクック海峡を横断するという次の計画も進行中です。
アオラキ・マウントクックについて
アオラキ・マウントクック(3754m)はニュージーランドの最高峰です。
マナリング氏とディクソン氏が登頂に挑んだ1890年当時の標高は3764mでしたが、1991年に頂上部で1000万立方メートル相当の氷塊と岩石が崩壊したため、10m低くなりました。
この山はニュージーランドの世界的登山家・探検家であるエドモンド・ヒラリー卿が登山の訓練を積んだ場所としても知られています。
ふもとに位置するハーミテージ・ホテルには、ヒラリー卿と地域の歴史を紹介するサー・エドモンド・ヒラリー・アルパイン・センターが併設されています。
関連記事
Sir Edmund Hillary Alpine Centre(英語)
こちらの関連トピックスもご覧ください
|