ブルーウォッカからワイン風味のモルトまで、少量で限定生産されている蒸留酒は、造り手と産地の個性の結晶です。
テロワール重視の蒸留酒はここ数年で定着してきたようです。単一産地にこだわったり、自生する植物を活用したりして、その土地の味を表現したお酒があらゆる蒸溜所の職人たちの手で生み出されています。地元産や在来種の原料を厳選しているのは、技術革新だけでなく、自分たちが住んでいる場所への愛着と、その土地の物語を伝えたいという思いの表れかもしれません。アオテアロア・ニュージーランドで風味づけに人気があるのは、カワカワ、ホロピト、マヌカといった在来種の植物です。古来マオリの伝統文化で大切にされてきた植物のアロマと風味が積極的に取り入れられています。
カードローナ・ディスティラリー(opens in new window)は、受賞歴のあるシングルモルト、ウイスキー、ウォッカ、ジン、リキュールなどの蒸留酒を製造しています。サザンアルプスの麓に位置するこの蒸留所は、この地域特有の地理と気候が独自の蒸留酒を形作ると確信しています。アルプスの水やオタゴの野原で採取する植物は欠かせませんし、ウイスキーの熟成に使用するワイン樽にはピノ・ノワールの残り香があります。テイスティング・ツアーに参加して、絵のように美しい蒸留所の舞台裏に迫り、土地の味わいに浸ってみてください。
リード家の兄弟、ステューとクリスは、少量生産のジンにこだわってウエリントンの北にブティック・ディスティラリー、リード + リード(opens in new window)を設立しました。彼らにとって素晴らしいジンとは、単にボタニカルや蒸溜工程だけでなく、その背景にいる人々の存在感があるものです。だからこそ、ボタニカルの選定からボトルのラベル貼りまで、すべての工程に自ら携わっています。何百回もの試行錯誤を経て完成した看板製品のネイティブ・ジンには、コショウのようなカワカワ、アロマティックなマヌカの葉、ジンジャーのようなホロピトと、ニュージーランド原産の3種類のボタニカルが使われています。併設のG&Tバーでは、蒸溜所でできた様々なジンを味わうことができます。毎週土曜日オープン。
ザ・ニュージーランド・ウイスキー・コレクション(opens in new window)は、ある復興活動から始まりました。20世紀初頭のこと、1830年代から続くニュージーランドの「命の水」、ウイスキー蒸溜の歴史は突然幕を閉じました。国内で最後のウイスキー蒸溜所であったウィローバンク蒸溜所が、古い飛行機の格納庫に400樽のカスクストレングス・ウイスキーを残して閉鎖されたのです。このウイスキーの歴史の一片を保存するため、ザ・ニュージーランド・ウイスキー・コレクションが設立され、自社ラベルでウイスキーを販売することにしました。以来、会社は次第に大きくなり、最新鋭の蒸溜所を設立して、数々の賞を獲得してきました。セラードアはオアマルの歴史保存地区にあります。ニュージーランド産ウイスキーの豊かな歴史を学びながら、素晴らしいウイスキーを味わってください。
本格派ならプホイ・オーガニック・ディスティラリー(opens in new window)は見逃せません。セラードアの雰囲気はむしろカジュアルですが、舞台裏は全く違います。蒸留所のオーナー、アレックス・キリチュクは元はウクライナの原子力技術者だった人で、蒸留の工程はどこにも負けないものだと胸を張っています。ウイスキーにはウクライナ産オーク材の小樽を使用し、アルコールが木と最大限接触するようにしています。また、ジンには3段階の浄化工程を設け、アルコールの不純物を除去しています。ブドウとプラムのエキスを使ったダブルウッド・ウイスキーや、アーユルヴェーダ医学で薬草として人気のあるバタフライピーの花で濃い青に色付けしたブルーブラッド・ウォッカは必見です。セラードア体験の一環として、キャビア・テイスティングやマスタークラスを予約しておくこともできます。キャビアについて学んだり、オリジナルの薬草を組み合わせたりして楽しめます。