タソックの茂みとニカウヤシの生育する緑豊かな森林を抜け、ウエストコーストの荒々しい海岸に至るこの道は、古来マオリの人々が往来してきました。
数あるグレート・ウォークのなかでもヒーフィー・トラックは特に明瞭なコントラストが楽しめるコースです。区間ごとに特色が異なり、うっそうとした降雨林、亜高山帯のタソックの草原、高く険しい山々、低地林とヤシの木に縁取られたビーチへと風景が変化していきます。全長82kmの本格的なコースですが、刻々と変わる景色が足の疲れを忘れさせてくれます。
トラックのあるカフランギ国立公園は全国で2番目の規模を誇る国立公園で、オオマダラキーウィの生息地となっています。カフランギで目にする岩の造形は、地質学者でなくとも興味深いものに映るでしょう。石灰岩や大理石を基盤とする一部の地域では、多数の洞窟と絶壁、天然のアーチ、陥没穴、浸食を受けた岩が特徴的な風景を形作っています。ニュージーランドで最大の洞窟群もこの公園内にあります。
ヒーフィー・トラックはもとはゴールデン・ベイ周辺からポウナム(ヒスイ)を求めて西海岸側の川へ向かったマオリの人々が通行した道です。ポウナムは道具や武器、装飾品に加工され、珍重されていました。
1日目 ブラウン・ハット > ペリー・サドル、17.5km
ブラウン・ハットから出発し、ブラウン川の上流に向かって歩いていきます。ブラウン川にかかる橋を渡ると、その先から次第に上りになり、アオレレ渓谷の美しい景色を見渡せる尾根に至ります。よく晴れた日には、北島のタラナキ山を望むこともできます。このトラック上ではここが最も標高の高い場所となります。その後少し下りになり、ペリー・サドル・ハットまで歩きます。近くにある天然のプールは充分な水深があります。水温が低いので、誰にでもおすすめできるわけではありませんが、泳ぐと疲れが吹き飛ぶほど爽快な気分になれます。
2日目 ペリー・サドル > サクソン・ハット、12.4km
この日もグーランド・ダウンズまではタソックの草原を進みます。途中にある名物のブーツのトーテムポールは、長年の間、ハイキングに訪れた人々が残していったブーツがちょっとしたオブジェになったものです。 コレクションに追加してみたい方は予備のブーツを持っていくとよいでしょう。また、この辺りには石灰質の岩が多く、滝や洞窟を見に行くこともできます。懐中電灯を手に、洞窟をすみかにするクモなどを探してみる人もいます。その先、サクソン・ハットまではほぼ平坦なタソックの草原が続きます。
3日目 サクソン・ハット > ジェームス・マッケイ・ハット、11.8km
蛇行する川にかかるいくつもの橋を渡りながら、タソックの草原と低木林をさらに進みます。 足下を見ると、ピンク色がかった花崗岩の輝きに気がつくでしょう。ジェームス・マッケイ・ハットはトラックから少し上がったオープンな台地にあります。ここからはタスマン海とヒーフィー川の両方が見えます。
4日目 ジェームス・マッケイ・ハット > ヒーフィー・ハット、20km
まずはコファイやキャベッジツリー、ニカウヤシの茂る降雨林の中をヒーフィー川に向かって少しずつ下っていきます。 途中、少し寄り道してニュージーランドの最大のラタの木を見ていきましょう。川の上流域には、全長148mの大きな吊り橋があり、河岸平野と川の流れを見下ろすことができます。河口に向かって下りていくうちに、ニカウヤシが目立つようになり、絶え間なく押し寄せる波のとどろきが聞こえてきます。潮や風向きによっては、川を逆流する波が見えることもあります。ヒーフィー・ハットは強風の影響を避けて、海から離れた場所に設置されています。
5日目 ヒーフィー・ハット > コハイハイ駐車場、16.2km
ヒーフィー川が海に注ぐあたりは幅が狭まっているので、川の水と逆流しようとする海水がぶつかり、勢いよく流れる様子は迫力があります。この日のハイキングは大半が森林の中です。途中、数カ所にビーチもあります。少し開けたスコッツ・ビーチで一休みしたら、コハイハイ・サドルの峠を越え、川にかかる橋を渡ります。少し先のコハイハイ駐車場には避難所と公衆電話があります。
トレッキング中
ヒーフィー・トラック上には、DOC(環境保全省)のハットが7ヵ所、キャンプ場が9ヵ所あります。ハットでは暖房設備とトイレ、寝台、水が利用できます。一部はガス調理設備と照明も設置されています。 ハットもキャンプ場も事前予約が必要(opens in new window)です。
トレッキング前後
ヒーフィー・トラックは周回コースになっていないので、東から西へ歩くか、西から東へ歩くかのいずれかを選択することになります。西側から出発する場合はウエストポートの様々な宿泊施設が利用できます。東側から出発する場合は、ネルソン地方のタカカの町に多数の宿泊施設があります。
トレッキング専門のツアー会社がいくつもあり、ガイド付きのトレッキングを催行しています。以下はその代表的なものです。
このトラックを個人で歩く場合は、DOCで宿泊施設を予約する必要があります。料金はコースによって異なりますので詳ししくはDOCウェブサイト(opens in new window)をご参照ください。ピーク時期は早めの予約をおすすめします。